<金口木舌>「脱はんこ」異論

 沖縄戦の頃に作られた日本軍の陣中日誌や命令綴(つづり)をめくっていると、あちこちに押印があるのに驚く。砲弾が飛び交っている時でさえ、軍の陣地で律義にはんこを押していた兵士がいたのである

▼そんな日本のはんこ主義が揺らいでいる。発足から1カ月を迎える菅政権が行政手続きの押印原則廃止を打ち出している。行政サービスの向上を理由に印鑑廃止を決めた県庁所在市もある。これも時代の趨勢(すうせい)か
▼書類や対面が基本の業務をオンラインで結べば行政の簡素化は進み、自然と印鑑の出番は減る。住民は役所に通う頻度は減るし、ペーパーレスも進むだろう。しかし、いいことずくめだろうかと疑っている
▼はんこ主義に代わる極端な合理主義とスピードに置いてけぼりを食う人もいよう。それに文書データの隠蔽(いんぺい)や改ざんがはびこらないか。実例を私たちは安倍政権で散々見てきた
▼押印には理由がある。文書を作る人、内容を精査する人が責任を持ってはんこを押し、行政の質を保ってきたはずである。安易なはんこ主義の放棄は責任の所在をあいまいにしないか。隠された国の思惑を感じる
▼面倒くさくても肝心なときは対面で確認を。きちんと文書を作り、誰がチェックしたか証拠を残して保存すべし。そういう当たり前の手続きが行政の信頼性を守る手だてとなる。突然の「脱はんこ」の大合唱、用心したい。



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