<金口木舌>コロナ禍でのメセナとは…


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 壮大な芸術作品を前に、時を忘れて何時間も居続けた経験がある。バチカン市国のシスティーナ礼拝堂の祭壇に描かれた「最後の審判」である

▼描いたのはミケランジェロ。ボッティチェリ、ダ・ヴィンチらと共に、名門貴族メディチ家の支援を受け、ルネサンス文化を花開かせた。支援がなければ、数々の作品は後世の私たちの目に触れることができなかっただろう
▼近年、企業が資金を提供して文化芸術活動を支援するようになっている。企業による支援を古代ローマの芸術文化の擁護者であったマエケナスのフランス語読みに由来し「メセナ」という
▼20日、都内でメセナに貢献した企業団体を顕彰する「メセナアワード」の贈呈式があった。受賞した7社・団体から支援への熱い思いが語られた。審査委員からは「コロナ禍で企業の文化的活動が後退するのでは」などと、コロナ禍での減収で支援を手控える企業が出てくることを危惧する声が上がった
▼文化や芸術は、私たちの心に気付きと感動を与えてくれる。社会に余裕が失われつつある今こそ、精神的な豊かさの重要性は高まっている
▼贈呈式でソニー音楽財団の水野道訓理事長は、コロナ禍で子どもたちにどう音楽を届けるのか、企画を募集したところ、千通以上の新企画が寄せられたと報告した。文化芸術のともしびを守るための知恵はまだある。