<金口木舌>危機を好機に


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 「展示会を開けず作品を売る機会がない」「また緊急事態宣言が出たらおしまいだ」。コロナ禍にあえぐ工芸作家の声だ。外出控えに加え、観光需要の減退でホテルなどからの注文も減った。「アルバイトで生活を維持するのがやっと」という作家もいる

▼3月の沖縄市工芸フェアは中止になったが、作家たちが来年のフェアに向けて動き出した。会場を市内の複数店舗に分散するという。感染症対策のガイドラインを厳守し、密を避けつつにぎわいを取り戻す作戦だ
▼予定される会場は高付加価値の宿泊施設やセレクトショップなど、若者に人気の店もある。中高年層中心の工芸ファンとの交流で新たな需要を掘り起こす狙いもある。危機を好機に転換する発想は前向きだ
▼文化の担い手への「公助」はどうなっているか。文化芸術関係者に個人20万円、団体150万円を上限に補助する国の制度は煩雑な手続きが敬遠され、申請が伸びない。予算の4割程度が余る見通しとなり、文化庁は運用を見直して第4次募集を始めた
▼一定額の自己負担が前提となるなど課題がある。文化関係者は「若手にとって自己負担は重い」となお見直しを求める
▼感染症対策と経済の回復の両立は難しいが、不可能ではないはずだ。命と経済のどちらも守る「ウィズ・コロナ」社会を、草の根から築こうと奮闘する人々に寄り添いたい。