<金口木舌>「ハワイに行くさ」


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 妻が病院勤めの時、高齢の患者が「そろそろハワイに行くさ」と言った。真に受けた妻は「うらやましい」と答えた。後に天国、あの世の意味で使っていたと知り、気まずくなった

▼移民世代にはハワイや南米などが極楽の地に映ったか。現実は安い賃金で働かされ、差別などの苦難に直面した。それでも県系人らは道を切り開き、世代を重ね、世界で活躍する
▼沖縄ハワイ協会前会長、高山朝光さん(85)が「ハワイと沖縄の架け橋 織りなす人々の熱い思い」を出版し、ハワイ県系人の活躍を紹介している。州政府運輸局長だった県系3世、東恩納良吉さん(85)もその一人
▼戦後復興中の沖縄よりも生活水準の高いハワイで学ばせたいと親族が呼び寄せ、東恩納さんは小学生で渡った。現地の学校で必死になって英語を身に付けた
▼沖縄県内の外国籍児童生徒は583人で、公立小中学校に日本語指導員を17人配置する。日本語・国際教室を設置する取り組みもある。一方、コロナ禍で経済的に困窮する外国人留学生が県内でも増えた。外国人に排他的な言説もある
▼きょうは国際移民デー。1990年のこの日、国連総会で採択された「全ての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する国際条約」にちなむ。かつて多くの県人が新天地を求めたように、海外出身の人々の目に今の沖縄は希望の地として映るだろうか。