<金口木舌>描く未来は


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 2002年公開のSF映画「マイノリティ・リポート」は、2054年の未来が舞台。物語では、特殊能力者が将来の犯罪を予知し、事件が起きる前に人々が取り締まられていく

▼トム・クルーズが演じる刑事の主人公は、予知によって取り締まる側から取り締まられる側になる。逃走のさなか地下鉄に乗ると、乗客の持つ新聞紙面が更新され、指名手配を伝える。乗客が逃走者に気付いたシーンが印象的だった
▼いつか実現する技術だと映画を見て感じた。上映から5年後の1月7日、スマートフォン「iPhone」が発売された。タブレット端末も世に続いた。今や動画、写真付きのニュースは手元で随時更新される。描かれた未来は予想よりも早かった
▼きょうで阪神大震災から26年。発生は午前5時46分。本紙は夕刊から報じた。印刷が最も早い1版の見出しは死者200人、2版は300人以上、最終3版は450人以上と記した。本紙ホームページの開設は翌1996年
▼崩れた建物の下で救助を待つ人々がいた。最終的な死者は6434人。今のようにスマホが普及していたら救助に役立ったと想像するが、時間は戻らない
▼3月11日には東日本大震災から10年。災害から一人でも多く救える未来を誰もが願う。一方、冒頭の映画が描くは監視社会。技術はもろ刃の剣になりえる。利点と欠点に目を凝らす。