<金口木舌>国民に目を向けて


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 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた昨年4月の緊急事態宣言の際、営業を続ける店舗への嫌がらせなどで問題となった「自粛警察」。相互監視社会は戦前を彷彿(ほうふつ)とさせた

▼息苦しさの反動なのか。自分だけは大丈夫だと信じて認知がゆがんでしまう「正常性バイアス」のせいなのか。感染のリスクが指摘され続けている会食で感染してしまう人が後を絶たない
▼県立北部病院が新型コロナの入院患者から聞き取りした感染経路をまとめている。最も多い「夜の街・会食」が4割近くに上り、次に「家庭内」が2割強。会食で感染した人が家族に感染させてしまう事例が目立つ
▼「こんなに苦しいとは思わなかった」と息を切らせながら訴える患者を励ます医師や看護師らが奮闘している。家に帰れないこともある医師や不眠に悩まされる看護師。終わりの見えない緊張が心身をむしばむ
▼ドイツのメルケル首相は昨年12月、「祖父母と過ごす最後のクリスマスになってしまうようなことはあってはならない」と感情をあらわにして不要不急の外出を控えるよう訴えた。会食を批判され「誤解を招いた」と釈明した菅義偉首相とは対照的だ
▼医療体制を維持し、国民の命を守るには自粛警察ではなく、国民に寄り添うリーダーのメッセージが必要だ。手元の資料を見て話すのではなく、国民にまなざしを向け、言葉を発してほしい。