冷たい雨が時折降りしきる米首都ワシントンには新時代への希望や不安が渦巻き、緊張感に満ちていた。4年前の1月20日、米大統領就任式会場で取材をしていた
▼トランプ大統領は就任演説で「権力を国民の手に取り戻す」と宣言し、国民の結集を呼び掛けた。集まった数十万の支持者らは何度も歓声を上げ、祝賀ムードに沸いていた
▼式典と真逆の風景も広がっていた。「自由と平等のために闘おう」。トランプ氏就任に反対する女性を中心とした50万人以上の市民が抗議集会とデモ行進を行った
▼「変革はここから始まる」。歌手のマドンナさんは抗議集会でこう訴えた。一方、トランプ氏の支持者は「新大統領なら米国を変えてくれる」と期待を口にした。主張は違えども、双方が新大統領誕生を契機に社会の「変革」を求めていたのが印象的だった
▼再び就任式を迎え、米首都は緊張感に包まれている。バイデン新大統領は就任演説で新型コロナや経済悪化などの危機に取り組む決意を表明するほか、前政権下で進んだ社会分断や政治的対立に対しても国民に結束を訴えるとみられる
▼4年を経て分断と対立を深めたトランプ氏は米国の民主主義に深い傷を負わせた。バイデン氏は米国に今後、どのような「変革」をもたらすのか。分断解消は重い課題であり、米国における民主主義の正念場でもある。
<金口木舌>米大統領就任式
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琉球新報社