本紙連載「セピア色の春―高校人国記」は各高校の卒業生の記憶をたどって校風を描く。在学中にスポーツや音楽、演劇、文芸と出合い、その道を究めた人々が生き生きと往事を振り返る
▼時代の空気を同じ学園で吸った同世代にとって高校時代の思い出は色あせないものだろう。読者から「母校への思いがより深まった」との声が寄せられた
▼卒業生から「出身校が誇り」との反応があったという。選抜高校野球への初出場が決まった具志川商高である。部員不足を乗り越え、学外で務めるOBの監督、コーチらが指導し、先の県大会で躍進した
▼同校は具商デパートの取り組みで知られる。全生徒が株主となった模擬会社が手掛ける地元産品などの販売会だ。毎年6千人超が来場する。コロナ禍でも中断することなくオンラインで本年度も開かれた
▼野球以外での選手の活動も選考に挙がる21世紀枠。具商デパートなど行事で部員が中心的役割を果たすことも選出理由となった。同校の特色が評価を得たことを考えれば、全校でつかみとった選抜だ
▼何より甲子園の夢を追って、学校生活にも真摯(しんし)な部員の努力のたまものである。〓理想の峰は遠けれど/たゆまず進めいざともに。校歌の一節だ。県勢の久しぶりの選抜出場の吉報は諦めないことの大切さを教えてくれるようでもある。ありがとう具商。そしておめでとう。
※注:〓は歌記号(庵点)