<金口木舌>ご安航を


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 国が違えば聞こえ方が違うと思わされるのが動物の鳴き声である。ニワトリや豚は、これほど異なるかと不思議になる。一方、物をたたく音には共通するものも

▼かつて英国では船に積んだワイン樽(だる)をたたいて数えた。「タン、タン」と響く。じきに何樽を何タンと数えるようになり、これがいつしか「何トン」に。船の大きさを示す単位として残る
▼総トン数1万1681トンが沖縄航路に就航した。琉球海運の新造船「あやはし」だ。福岡と結び、貨物を運搬する。排ガス規制対応のための硫黄酸化物の除去装置を搭載した最新船
▼かつて本土への旅路はほとんどが船だった。波之上丸、白山丸の船名を懐かしむ人もいるだろう。1958年、甲子園に初出場する首里高ナインを運んだのは沖縄丸。本土との往来は空路が主となったが、物資輸送では船は欠かせない
▼旅立ち、出発の季節だ。卒業式を終え、今日にも進学先へと向かう学生がいる。就職や転勤に備える人も多かろう。春先に船出した「あやはし」を自らの出立に重ねる人もいよう
▼言語を問わず世界共通で船員がやりとりできるのがAからZまでの国際信号旗。一旗一旗の組み合わせなどで信号となる。港を出る船に向け、他船がU旗とW旗を掲げることがある。「ご安航を祈る」の意。新たに旅立つ全ての人の航路が穏やかで愉快なものとなるよう祈る。