<金口木舌>東北と沖縄


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 那覇市泉崎で青信号に変わるのを待っていると、制服姿の那覇市消防局員、東恩納翔さんと居合わせた。22歳。本年度の採用だという。目的地は同じだと察し、声を掛けた

▼東日本大震災から10年となる11日、那覇市のパレットくもじ前で岩手県の県紙「岩手日報」が特別号外を配布した。震災の教訓を県外にも伝えたいと、復興の現状や10年の歩みを伝える。全国の中学校にも郵送した。特別号外の発行は10年続く
▼沖縄での配布は昨年に続き2回目。沖縄の人々を前に東根千万億(あずまねちまお)社長が訴えた。「祈りも大切だが、行動することも重要だ。私たち大人の背中を子どもたちは見ている。得た教訓を共有したい」
▼配布には沖縄県内新聞社の関係者や一般市民も協力した。岩手の被災地で活動した那覇市消防局から、非番の隊員約20人も加わった。新人の東恩納さんもその1人だ
▼号外を配ると瞬く間になくなった。大震災の発生時、東恩納さんは中学1年。これまで被災地を訪れたことがない。「みんなが号外を受け取った。被災地の教訓や思いをつなげていけたら」
▼号外には東北の教え「津波てんでんこ」を記す。「地震が起きたら、てんでばらばら逃げろ」という意味だ。那覇市消防局員らは岩手日報社に、沖縄の教訓「命どぅ宝」の額入りメッセージを贈った。震災の記憶を風化させず、命の尊さを語り継ぐ。東北と沖縄は誓う。