<金口木舌>クーベルタン男爵


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 クーベルタン男爵の提唱で始まった近代オリンピックでは一時期、綱引きが正式種目だった。1900年の第2回大会から五つの大会で実施された。今回の東京五輪で復活を目指したがかなわなかった

▼かつては水泳に潜水、陸上には立ち幅跳びといった五輪種目もあった。第2次世界大戦の直後まで五輪には芸術競技もあった。スポーツを題材にした文学や音楽、絵画の作品を採点で競った
▼神々をあがめて行われていたのは古代五輪。紀元前のギリシャでの古代大会から長きにわたって行われている競技の一つがレスリングである。近代五輪では1大会を除いて継続されてきた
▼最古の格闘技と呼ばれるレスリングで屋比久翔平選手が県勢初の五輪代表の座をつかんだ。五輪選考会に2度進みながら試合中のけがなどで果たせなかった父・保さんと追い続けた夢の実現だ
▼自転車の新城幸也、空手の喜友名諒の両選手が国際大会で抜群の実績を挙げ代表の座を射止めたのは圧巻だった。屋比久選手は国内選考、アジア予選と一発勝負を勝ち続けなければならなかった。コロナの影響で海外予選の延期や開催国変更もあり、状態を維持するにも苦労した。いばらの道だった
▼父が果たせなかった大願を成就させ、次は自らの目標達成を目指す。掲げるのは五輪表彰台。しかも一番の高みへ。新たな挑戦へと翔(と)び立つ。