<金口木舌>泡盛が奏でるメロディー


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 ボーカリストの歌唱法に「フェイク」というものがある。「偽物」という意味ではなく、オリジナルのメロディーに変化を加える技術だ。楽曲本来の良さを生かしつつ、新たな世界を表現できる

▼アレンジ一つで魅力が高まるのは泡盛も同じ。ロックや水割り、炭酸割りだけでなく、コーヒーや練乳、青汁割りなど、いろんな飲み方がある。酒造所や銘柄ごとの特徴もさまざま
▼近年はアルコール離れが指摘され、酒類業界を取り巻く環境は厳しい。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、泡盛の総出荷量は16年連続で減少となった。2004年のピーク時と比較すると半減した
▼泡盛の需要回復を目指し、官民が一体となって海外輸出に力を入れている。泡盛の価値向上に向け、原料から県内で栽培する琉球泡盛テロワールプロジェクトという取り組みもある
▼高アルコールの酒類を好む欧米では、泡盛の注目度が高いという。ジンやウオッカなど四大スピリッツと同様に、カクテルのベースとして泡盛が使われる。県内では泡盛カクテルの独創性を競うコンテストも開かれる
▼歌唱法の「フェイク」は、オリジナルの楽曲がしっかりしているからこそ楽しみが広がる。泡盛も多彩な味わいを生み出すベースとして、十分な魅力を備えている。泡盛も加えて「五大スピリッツ」に。そう呼ばれる日が来てほしい。