漫画家・松本零士さんの代表作「銀河鉄道999」に「かじられ星」という惑星が登場する。その星の地面は食べることができ、他の星の人が訪れては持ち帰る。星は削り取られ、徐々にやせ細っていく
▼架空の惑星の物語と沖縄を取り巻く状況は、どこか似ている。リゾート地として人気の沖縄は、国内外から多くの人が訪れるようになった。国際通りは観光客であふれ、多彩な外国語が飛び交った
▼にぎわったのは那覇周辺だけではない。パワースポットとして紹介された久高島、民泊施設が立地した恩納村や本部町。観光客が押し寄せた地域では、聖域への立ち入りや夜間の騒音など、さまざまな課題が表出した
▼「観光客は来ない方がいい」。以前、話を聞いた住民の心は、明らかにすり減っていた。沖縄が観光地として消費される中で、そこに住む人たちの気持ちには光が当たらなかった
▼コロナ禍の影響で、2020年度の入域観光客数は前年度比で7割近く減少し、外国人客はゼロとなった。国際通りはシャッターを下ろしたままの店も多く、打撃の大きさを感じさせる
▼観光業が沖縄の成長を支えたことは間違いない。観光客の笑顔が戻ることを願う人は多いはず。再びにぎわいを取り戻したとき、地域の住民も一緒に笑っているか。みんなが幸せになる観光を目指し、同じ方向を向いて考える必要がある。
<金口木舌>「かじられ星」の未来
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琉球新報社