<金口木舌>若年妊婦を支える社会に


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 6歳の子どもが事件を起こし児童相談所から通告があった。母親は15歳で妊娠したが相談できる人もおらず孤立していた。「母親は年齢を偽って働き、懸命に育てた。でも育て方が分からず、たたくこともあった」
▼おきなわ子ども未来ネットワークの山内優子代表理事が約30年前に出会った親子だ。沖縄は出生率が高いが、若年妊娠・出産の割合も全国一だ。全出生数に占める10代の出産の割合は全国平均の2倍を超える
▼県の調査で妊娠初期の満11週までに届け出た人の割合が10代は7割を下回る。当事者に性や子育てに関する知識が不足していることに加え、若年出産を取り巻く何重にも過酷な環境が相談しづらい状況を生んでいる
▼おきなわ子ども未来ネットワークは「まりやハウス風のいえ」を設立した。居住先のない妊産婦のための宿泊型の居場所だ。10代で所得がない人から入居費は取らない。助産師らが24時間態勢で見守り、産婦人科の受診に同行するなど支援する
▼山内代表は「子どもの貧困対策は生まれる前からの支援が重要だ」と強調する。親や家庭が何らかの問題を抱え、孤立していることも多いという。30年前に出会った親子から学んだことだ
▼個別の事例を支援につなげる仕組み作りとともに、若年妊産婦を社会全体で支えることが重要だ。中高年層や男性こそわがことと考える必要がある。