<金口木舌>チャモロと沖縄


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 「裏切りだ」。米領グアムの米軍基地で働くなど、米国民として誇りを抱いていたエンジェル・サントス氏は1990年代、環境影響調査の報告書を読んでがくぜんとした。基地周辺の飲用水、地下水が発がん性物質で汚染されていた

▼サントス氏は数年前、幼い娘をがんで亡くしていた。市民団体「ナシオン・チャモル」を結成し、米軍による環境汚染を告発。先住民族チャモロの自己決定権回復を求めて運動した。「穴を掘り、猛毒を含む軍需品を埋めるのは一般的だった」と米軍を非難した
▼2003年の死去後もチャモロの人々に語り継がれる存在だ。米国からの独立運動の象徴でもある。基地に振り回されてきたグアムの歴史は沖縄に重なる
▼うるま市の米陸軍貯油施設から有機フッ素化合物に汚染された水が漏れ出した。流出量は最大2・4トン余だという。排水路の先には北谷浄水場が取水する天願川がある
▼昨年、普天間飛行場から同物質を含む泡消火剤が大量に漏れたばかりだ。この物質による水質汚染は16年から問題化している。しかし陸軍貯油施設にも貯蔵されていたことを、県民は今回の事故で知らされた
▼基地内にどんな有害物質があるのか、米軍は全容を明らかにしない。日本側の立ち入り調査要求にも満足に応じない。この島に76年間も米軍を駐留させる日米両政府は今後も県民を欺き続けるのか。