<金口木舌>親子鷹


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 目標に向かって努力を重ねる父子を「親子鷹」と表現することがある。子母沢寛が勝海舟とその父を描いた小説「父子鷹」からきているという

▼五輪の年。思い浮かぶ父子の姿がある。アテネから3大会連続出場したレスリングの浜口京子選手と父で元プロレスラーのアニマル浜口さんだ。娘への渾(こん)身(しん)のエール「気合だ」の絶叫が今も耳にこだまする
▼東京大会の男子ハンドボール代表に浦添市出身の東江雄斗選手が選出された。同市出身の池原綾香選手も女子代表に選ばれた。ハンド王国の誉れである
▼東江選手の父正作さんは日本リーグの名門大崎電気の元選手。リーグオールスターにも選出された名プレーヤーだった。母功子さんも競技出身で、中学生の指導を続けてきた。二人とも沖縄のクラブチームでも長くプレーした
▼幼い頃から練習に連れ出され、ボールやシューズの響きが子守歌代わりだったというから文字通りの親子鷹だ。東江選手の中高時代、取材で正作さんに話を聞くと息子には厳しめの評価だった印象がある。競技者出身だからこそだったのだろう
▼代表選出後、エールを送る父母の優しい目が印象的だった。家族のみならず、県民にとっても誇らしい。本番に向け代表エースには重圧がかかるだろう。躍進した1月の世界選手権のように、プレッシャーをしなやかにはねのけてくれるはずだ。