<金口木舌>理念と現実と


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 個人種目で県勢初のメダルを獲得し、金メダリストも生まれ、スポーツの祭典は幕を閉じた。閉会式では金を獲得した喜友名諒選手が旗手を務め、エイサーも披露された

▼選手、ボランティアらの奮闘に彩られた大会だった。一方で何か後味の悪さも残る。国際オリンピック委員会のバッハ会長は閉会宣言で「日本国民は成し遂げたことに誇りを」と呼び掛けたが、世論が賛否渦巻く中での開催だった
▼閉会式で「パラダイス・ハズ・ノー・ボーダー」という曲が演奏された。境界線なき楽園と訳せる。あらゆる差別を許さない五輪憲章の精神にも合致するが、境界のない社会とは言えない私たちの社会である
▼その締めくくりで流れたのは「Chosen Family」。英国育ちの日本人歌手リナ・サワヤマさんとエルトン・ジョンさんの曲だ。性的少数者にささげた作品とされる。その少数者への差別を許さないとする立法さえまとまらない
▼「復興」や「多様性と調和」など、大会ではさまざまな理念が打ち出された。その実現とはほど遠いのが現状である。見かけ倒しとの批判はつきまとう
▼大会理念にもう一つ「未来への継承」がある。開幕前、組織委の女性理事が増えたのは組織委会長の蔑視発言が発端だった。理念と現状の矛盾を直視し、誰もが住みよい社会に近づくきっかけとすることはできるだろうか。