先月26日付の本紙記事を読んで思わず首をひねった。2020年度の東京の食料自給率が初めて0%を記録したという。大都市にあふれる食の実像だろうか。日本全体の自給率は37%にとどまる
▼日本は食料の重さを熱量に換算した「カロリーベース」で食料自給率を出している。有効性には疑問の声もあるが、輸入に頼る食料事情を知る指標にはなる。政府が目標とする30年度の食料自給率は45%。沖縄は例年、30%前後だ
▼食用以外の作物を育てている農地をフル活用してイモ類を育てれば、国産だけで日本人に必要なエネルギー量を賄えるという農林水産省の試算がある。「芋の時代」の再来は現実的ではないが、今後、何が起こるか分からない
▼例えばコロナ禍である。「医者が足りない、病床が足りない。ワクチンを集めよう」という事態を誰が想像していただろうか。よもや「野戦病院」という言葉を聞くとは予想しなかった
▼食にしろ医療にしろ、安泰だと思っていたことが、不意打ちの危機でほころびが生じてしまう。それに対処するのが政治のはずだが、その構えはあるか。明日、自民党総裁選の告示という
▼党内権力闘争とそれを批判する野党。コロナ禍なのに、いつもながらの政治ショー。他にもやることがあるはずだ。「危機を直視し、民を思う政治家が足りないのか」。そんな疑問が頭をよぎる。