<金口木舌>「大城さん、ニュースです」


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 記者会見などで人の話を聞きながらキーボードをたたき、文字を起こしていく。同僚が上手にこなす作業が苦手である。話すスピードに指が追い付かない。話し言葉を即座に文字にしてくれる道具はないか

▼そんな願いは既に実現している。同僚たちは音声認識ソフトを使い、記者会見の発言内容を手早くまとめている。けっこう正確だというが、しまくとぅばの文字変換は難しいようだ
▼このソフトで文字化した玉城デニー知事の記者会見資料を見て吹き出してしまった。冒頭に「はいはい財布吸うように宇宙がなびら」とある。「はいさい、ぐすーよー今日うがなびら」を誤って認識したらしい
▼しまくとぅばの文字化にてこずっている人には朗報だろう。ITやしまくとぅばに関する事業を展開するクレストが、しまくとぅばを漢字とかな交じり文に変換するシステムを開発した。このニュースを大城立裕さんに伝えたかった
▼沖縄初の芥川賞作家もしまくとぅばにてこずった。「打っているうちに、赤い波線でエラーメッセージが出てしまう」と生前語っておられた。日本語ワープロソフトは沖縄の言葉を受け付けなかった
▼初期の代表作「亀甲墓」のサブタイトルに「実験方言をもつある風土記」と付け、しまくとぅばの導入に挑んだ人だ。最新のシステムでどのような作品を生んだだろう。大城さんが旅立って1年になる。