<金口木舌>議場の風景


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 桜坂劇場で上映中のドキュメンタリー映画「コレクティブ 国家の嘘」は、ライブハウスの火災がきっかけで明らかになったルーマニアの政治腐敗を描く。陰の主役は不正を告発した女性たちだった

▼腐敗の根源にある医療界と政治の癒着を女性たちは放置できなかった。不正に加担したという自責の念に駆られながら、事実を明らかにしていく。彼女たちの勇気と覚悟が国を動かした
▼秘密警察が活動するなど苛烈な歴史を歩んできたルーマニアほどではないにしても、日本で女性が国政に挑むには、相当の覚悟を要する。そして、その壁は厚い
▼衆院選では186人の女性が立候補した。結果は45人が当選。当選者に占める女性の割合は、1割にも満たない。候補者数の男女均等を目指す「政治分野の男女共同参画推進法」成立後、初の総選挙となったが、法の理念が実現したとは言い難い。それはなぜか。当選者一覧を見て、自問自答する
▼ジェンダー平等は社会の流れだが、圧倒的に男性が多い議場の風景は今も昔も変わらない。それは国会だけでなく、県議会、市町村議会も同様だ
▼クオータ制の議論は緒に就いたばかり。この流れを止めてはいけない。私たちの暮らしをより豊かにするために、単色に覆われた議場の風景を変えよう。まず変えるべきなのは「政治は男性の仕事」という固定観念そのものだろう。