イヤホンから聞き覚えのある声が聞こえた。主は作家の故・大城立裕さん。1978年、県史料編集所長として南米を訪れ、県系1世に聞き取った音源だ。当時52歳。うちなーぐちを交え、移民の体験談を引き出した。音源は10月から県立図書館で公開中
▼証言した県系1世は親戚が日露戦争で徴兵され命を落とした。移民に参加した背景には徴兵を避けたい思いがあった。証言は小説「ノロエステ鉄道」に反映された
▼真珠湾攻撃から80年。開戦後、県系移民も米国や米国の友好国で「敵性外国人」として取り締まりの対象になった
▼沖縄戦など戦争末期を学ぶ機会は多い。加えて開戦時にも目を向けたい
▼戯曲「カクテル・パーティー」が10年前、ハワイで上演された。日米ともに加害者と認め合った上で和解へ向かう未来がうかがえる同作。日本に攻撃された地で上演された意義は深い。作者の大城さんは「被害者、加害者を超え平和を築く模索をする動きだ」と強調した。戦争の悪循環を断つために何が必要か。大城文学から学ぶことは多い。