<金口木舌>松のある景観


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 「昔はそこら中に松の大木があったが、すっかり見なくなった」。北中城村和仁屋の比嘉清文さん(84)が懐かしそうに話した。比嘉さんが庭の松に着生させたカトレアが咲いた。松の木でボウランが咲いたかつての風景がヒントになった

▼同村で和仁屋などの集落は北側にクサティムイと呼ばれる森があり、南側の斜面に家が並ぶ伝統的な構造が残る。ただ現在、松の大木は見当たらない。比嘉さんは「松食い虫の影響かもしれない」と話した
▼中部で松と言えば宜野湾並松(じのーんなんまち)が知られる。普天間から嘉数まで南北に延びる街道に松が並び、国の天然記念物に指定されていた。沖縄戦や戦後の伐採などで消失した
▼普天間で建物の取り壊しが進んでいる。市が公開している整備計画には並松街道の整備も含まれる。普天満宮の「門前町」として栄えた風景を思い起こさせる
▼県内各地に中心市街地の再開発計画がある。新たな街にも歴史を感じさせる景観があるといい。さまざまな世代が古里を愛する気持ちを共有できるはずだ。