子どもらのつぶらな瞳に、赤ん坊を抱いた母親の笑顔。故・阿波根昌鴻さんが残した写真展「島の人々」が伊江島で開かれた
▼当時珍しいカメラで1955年~60年代後半に撮りためた2600点の中の300点が展示された。開催中は千人近く訪れ、懐かしそうに名を呼んでいた
▼人々の表情は躍動感にあふれている。土地と家を追われ過酷な日々の中、命を紡ぎたくましく生きた。その命の輝きこそ、米軍への抵抗そのものだったのかもしれない。阿波根さんの一人息子は戦争で出征し、亡くなった。亡き息子の姿を青年たちに投影していたのだろうか
▼復帰50年、県内各地で共同体の歩みを残そうという活動が盛んだ。国頭村の郷友会「北斗会」はDVD「清らシマ国頭」を制作した。辺野喜区には、うりずんの季節に咲く伊集の花を詠んだ歌碑がある。戦後最初の戦没者慰霊祭は菊ではなく伊集の花が飾られたという
▼島の歩みを残す取り組みは、豊かな精神文化を見つめ直すことでもある。コロナ禍の今だからこそ、共同体の記憶が支えになる。