もう降りやまないかも。今年の梅雨はそう思わせるほど、記録的な降水量だった。降りしきる雨は「君の名は。」で知られる新海誠監督によるアニメ作品を思い出させた
▼祈るだけで晴れにする力を持つ少女が主人公の「天気の子」の世界は雨が降り続ける。「言の葉の庭」は雨宿りから始まる恋の物語。これらの雨は単に背景ではない。登場人物の言葉、心象風景を代弁するように描かれている
▼沖縄の歴史の節目も雨が多い。1972年、沖縄の日本復帰の日は「土砂降り」。6月23日の慰霊の日は最近、雨が多い。その様子は「涙雨」などと表された。悲しみや悔しさの感情が重なる
▼雨は悪影響もあるが、負の側面だけではない。雨の「平和の礎」には、一緒の傘に入って手を合わせる家族らの姿があった。平和を願う人々の距離を近づけ、その思いを可視化させたのは雨だ
▼あれだけ降り続いたが、梅雨前線は沖縄から離れようとしている。降りやまない雨はない。その時を待ちながら、もう少しだけ梅雨ならではの光景を楽しむのも悪くない。