<金口木舌>「ハワイやっさー」のちむぐくる


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 沖縄市にある墓地のテレビコマーシャルに「ハワイやっさー」というせりふが出てくる。民謡歌手の故登川誠仁さんと俳優普久原明さんの愉快な掛け合いや、墓地とハワイの妙な取り合わせが笑いを誘う

▼海外移住が盛んだった時代の言葉であろう。困窮にあえぐウチナーンチュは、憧れの楽園をハワイに求めた。移住後も奮闘を重ね、県人社会を築いた。「ハワイやっさー」の裏には、ハワイと沖縄双方の苦難がある
▼うちなー噺家(はなしか)の藤木勇人さんは、辛酸をなめながら仕送りを続けた県人と、故郷で待つ家族のちむぐくる(真心)を見る。「懸命にサトウキビを作り、苦労を乗り越えた。そんな歴史が『ハワイ』と言っただけで通じる」
▼沖縄に5日間滞在したハワイ州のイゲ知事は、この言葉をご存じだろうか。滞在中、さまざまな交流を重ねた。西原町の本家で仏壇に手を合わせた時、祖先の歩みをしのんだであろう
▼米国によって王国が倒され、独自の言語が抑圧された。不幸な戦争が県人を翻弄(ほんろう)した。ハワイの近現代史をたどり、沖縄と重ねてみる。そこに見えてくるものは「本国」に振り回される民の姿である
▼イゲ知事は沖縄とハワイの関係を「友情に培われた絆を超えた家族」と呼んだ。お互いの歴史を踏まえての感慨であろう。「ハワイやっさー」のちむぐくるをたずねつつ、知事の言葉をかみしめたい。