<金口木舌>TPPは決着していない


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 「TPP(環太平洋連携協定)と安保法は似てますよ」。先日聞いた講演で、片山善博元鳥取県知事・元総務大臣がこう指摘した。「どちらも米国で勝手に約束してきて、国会を軽視している」

▼安保法は首相が米議会で今夏成立を約束し、国会議論を打ち切る形で強行成立させた。秘密交渉で大筋合意したTPPは、ふたを開けると、衆参両院の農水委が決議した「重要5品目の関税撤廃の除外」が形骸化されていた
▼片山氏によると、TPPに反対する日本の地方議会の決議は農業保護が主眼だが、ニュージーランドでは専門家やNPOが発言できる公聴会を何度も開き、幅広い観点から問題点を突く
▼オークランド市議会は、市の公共事業の裁量権を奪わないこと、過剰喫煙を制限する政策を守ること、食の原産地表示や遺伝子組み換え表示を守ること、労働基本権を空洞化させないこと-などを盛り込んだ
▼TPPには「投資家と国家の紛争解決(ISDS)条項」がある。健康や環境を守るための規制や地元優先発注策が、投資を阻むとして外国企業から訴えられかねない。市民は自治や主権が侵される恐れを、草の根レベルで理解している
▼私たちもワインやバターが安くなる恩恵だけに目を奪われてはいけない。TPPは決着したわけではなく、国会承認までは何の効力もない。議論の時間はまだある。