<金口木舌>歴史を刻む沖縄そば


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 県民食の讃岐うどんへの愛情から「うどん県」を名乗る香川県。2日に1玉の割合で食されるというソウルフードだ

▼沖縄そばも負けてはいない。沖縄生麺協同組合公表の1日当たり約20万食で単純計算すると、全県民が週に1回は食べている。強敵ラーメンやうどんの度重なる攻勢も乗り越え、パーラー、食堂、本格派、カフェや古民家系などが元気に軒を連ねる。家庭用の人気も磐石だ
▼県外出身の私が初めて食べたのは牛野菜そば。本島南部のドライブイン、具をかき分けそばを拝むまでの長い時間と形容し難い味を忘れない。変化球の印象が強過ぎたか長く食べずにいたが、なぜか今では常食に
▼沖縄戦で焼失したそば屋の復活を支えたのは戦災で夫を失った女性たちだった。復帰後、公正取引委員会は「そば粉が入っていない」と名称に一時物申すが、沖縄生麺協同組合の尽力で守られた。きょう「沖縄そばの日」が歴史を刻む
▼シルクロードから中国を経由し、琉球や日本に伝わった小麦の麺の道。はるかイスラムから、またイタリアのパスタから日本に続く麺のあれこれを知るに、それらのあっけらかんとした「麺貌」に心和む
▼食い意地のなせる業か、日本ではやれだし汁だこしだとうるさい向きも。しかし沖縄そばは悠々あくせくしない。歴史はさりげなく丼に抱かれ、あなたの注文を待っている。