<金口木舌>監視委を監視しよう


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 アメリカ映画「博士の異常な愛情」(1964年)は米ソ冷戦下の核戦争の恐怖をスタンリー・キューブリック監督が皮肉を込めて描いた喜劇だ

▼非常事態に慌てる大佐、タフな交渉をする大統領、奇妙なドイツ人科学者。怪優ピーター・セラーズが一人三役を演じた
▼現実の一人三役がある。名護市辺野古への新基地建設で環境影響監視を担う政府の第三者委員会だ。環境アセスの審議をした政府有識者委から委員ほとんどが横滑りし、仲井真前知事の埋め立て承認後にできた「環境監視等委員会」である
▼ふたを開ければ辺野古保全の計画立案、指導、監視計画策定から一部の事業実施まで関わった。同時に大手環境コンサルのいであ社もアセス作成から監視委運営まで監視委と不離一体の一人三役。委員への寄付金も問題に
▼「誤解を与えぬように」と言うも「違法性はない」と決め込む政府こそ辺野古保全劇の制作総指揮を執る。その作品たるアセスや監視委の特徴は(1)非常に遅い情報公開(2)公開されても分かりにくい(3)莫大な事業費で比類のない大規模調査を行うが「建設ありき」の結末だけ不変
▼映画では狂った歯車に乗り、核攻撃「R作戦」遂行に向けた米爆撃機がシベリアの空を飛ぶ。破滅に向かう不気味と滑稽。法制度や慣習に守られた壁の中で粛々と進む辺野古保全の奇妙な顔を監視していこう。