<金口木舌>名を正す


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 孔子の論語にある。「名正しからざれば則(すなわ)ち言(げん)順(したが)わず」。「生きるための論語」(ちくま新書)の著者安冨歩さんは「物事にはふさわしい名を与え」なくてはいけないとして、その意味をひもとく

▼人は事態の名によって世界像を構成する。「言葉が事態に対応していなければ対処力を失う」と。危険なのに安全と名を歪(ゆが)めてしまえば、事態に即した、まともな議論にならず、創造的対応はできないとする
▼2008年度以降、物事が見えにくくなったと指摘される問題がある。生活困窮世帯の児童生徒数である。沖縄市でも小中学校ごとに公表していたが、市全体の数値に一本化された
▼地域への偏見を招くなどの意見もあり、それを踏まえた対応は理解できる。一方で市全体の数値にまとめたことで、貧困問題に直面する地域が、事態に向き合う対処力を失っているとの指摘もある
▼市全体の数値となるが、13年度の調査で給食費などを補助する就学援助は、沖縄市が県内で最も高く26・83%となった。最新の数値で全県的な比較は定まらないが、14年度はやや減ったものの、全体の26%の児童生徒が就学援助を受ける
▼数字の背後にいる子らに思いをはせれば、大人が取り組むべき課題は歴然だろう。各学校区域で、進む事態にふさわしい名を与え、いかに創造的対応をするか。子に恥じぬ対処力を見せたい。