<金口木舌>秋の夜長はスマホを置いて


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 今夜、空で約442年ぶりの天体ショーが繰り広げられる。皆既月食と月食中に天王星が月に隠れる「天王星食」が起き、天候が良ければ日本各地で観測できそうだ

▼古くから日本人は月を歌に詠み、物語にしてきた。光り輝く竹から生まれた少女が老夫婦に育てられ、月に戻っていく「竹取物語」は日本最古の物語とされ、教科書にも載っている
▼あらすじはよく知っているので、学生の頃はテストで点数を取るために単語や文法を覚えることに気をとられていたが、大人になって読むと発見がある
▼求婚してきた貴公子たちに無理難題を出し、貴公子たちを滑稽に描くのは権力者を風刺しているように読める。老いや苦悩から逃れられない地上からそれらがない月に戻る時のかぐや姫の迷いは、人間が生きるとは何かを考えさせられる
▼年を重ね、経験を積んだからこそ感じられることがある。秋の夜長。スマホから離れて空を眺めるのもいい。以前に読んだ本を再び手に取り、物語と出合い直してみるのもいい。今月23日までは秋の読書推進月間。