<金口木舌>愛ある名前、愛なき名前


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 各種大会記録を扱う運動面で出合う、小中高生の名前が意外と難しい。「大」「陽」「心」「愛」など易しい字でも組み合わせで難読となる

▼きらきらネームと呼ばれる宝塚俳優ばりの名前の流行からしばらく経つ。華やかな当て字で読みも西洋風、しかし頑張れば何となく読める。反動で「~子」「~男」時代に戻るしわしわネームなる命名もはやったとか、はやらなかったとか
▼今見ていると意味より音を優先する印象が強い。昭和世代にはなじみの薄い「吏」「偉」が増え、自然の「海」「空」「陸」、沖縄的な「琉」「那」も組み合わせ加減で難読に。「胤(たね)」に至っては入力前にしばしうなる。宝塚俳優よりは落ち着いた、読めそうで読めない難読氏名、何と名付けよう
▼翻って痛快な名前の話だ。秋植えや秋まきの植物を売る種苗店の一角にある野菜の種が並ぶ。「いいなずけ」「野武士」「耐病総太り」「エベレスト」「おふくろ」「おしん」「おろし二号」
▼答えはダイコンだ。ほかの野菜にはない多彩でおおらかな名付けに、庶民のダイコンへの深い愛着を知る。沖縄もやがておいしい島ダイコンの季節
▼政府がいよいよ着工した辺野古埋め立て工事を「普天間の危険性除去」とは呼ぶまい。海兵隊一部グアム移転による「沖縄の負担軽減」もそうだ。聞き心地のいい名付けの向こうに、親や庶民の愛情は一向に見えてこない。