<金口木舌>原体験守る養殖の挑戦


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 海で見た魚たちの名前を知ろうと、家に戻り図鑑をめくった。幼少期、本部町備瀬崎に通った頃の思い出だ。浅瀬にいたシラヒゲウニをその場で食べた。甘い味と共に沖縄の自然の豊かさを記憶に焼き付けた

▼近年、シラヒゲウニの収穫量がピーク時の千分の一以下まで激減した。これでは気軽に食べられない。今は子を連れて備瀬崎に行っても「ウニよ、生きて」と祈るばかり
▼シラヒゲウニ漁の復興を目指し、養殖の研究が進んでいる。うるま市では自動車部品メーカーが完全循環型の陸上養殖に挑んでいる
▼未利用資源を活用し、環境負荷と生産費を低減する配合飼料を開発した県水産海洋技術センターの玉城英信さんによると、収穫減は観光客急増による乱獲が原因。「親子が採ったくらいでは減らない」というので安心した。餌の開発は「沖縄の将来に貢献できる」と話し、資源回復を見据える
▼養殖技術が進展すれば漁業者の生活も安定する。豊かな海の原体験を次世代につなぐ物語を語りつつ、子どもと食べる養殖ウニの味も格別だろう。