<金口木舌>新郎の4人の親


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 数年前の結婚披露パーティー。米国人の新郎の横に2組の夫婦が並んだ。新郎の両親は彼が幼いころに離婚し、それぞれ再婚。新郎は4人の“親”と抱き合い、感謝の気持ちを示した

▼その光景は日本でも見られるものになった。いまや結婚する4組に1組は再婚だ。英語で「継」を表す「step」を冠したステップ・ファミリーという言葉も一般化した。結婚や家族の形が多様になっていることを示す一例だ
▼しかし社会の変化に法律は追い付いているか。最高裁は4日、離婚後の再婚を女性のみ6カ月間禁じる民法の規定が「法の下の平等」を定めた憲法に違反するかどうか、当事者から意見を聞いた。早ければ年内にも憲法判断を示す
▼再婚禁止規定は、再婚後に生まれた子の父親が混乱しないよう明治時代に定められ、戦後も引き継がれた。DNA鑑定のない時代には家族の紛争を未然に防ぐ効果があっただろう
▼しかし規定が「無戸籍児」という悲劇も生む。離婚成立後300日以内に生まれた子は前夫の籍に入る。それを避けるため出生届を出せない母親がいるのだ。夫の暴力から逃れていて離婚できない女性もいる
▼法務省は「人間の尊厳に関わる重大な問題」とする。子どもを守るべき法律が、子どもの人権を脅かす状況をどう考えるか。法律は早く社会に追い付けと、願わずにいられない。