防災頭巾をかぶった子がおびえた顔で身を隠す―。1月下旬、那覇市で弾道ミサイル飛来を想定した避難訓練があった。78年前の子どもたちが感じた恐怖を想像する
▼沖縄戦前年、空襲が激しさを増す中、子どもたちは「空襲警報の歌」を教えられた。子どもの頃、戦争を体験した人はこの歌をよく覚えている。爆風や破片から守るため、両目と両耳を両手でふさいだ
▼「空襲警報聞こえてきたら 今は僕たち小さいから 大人の言うことよく聞いて 慌てないで 騒がないで 落ち着いて 入っていましょう 防空壕」
▼歌や竹やり訓練は沖縄戦で何の役にも立たず、大勢の子どもの命が奪われた。翁長安子さん(93)は避難訓練を重ねた当時と今の空気を重ね合わせる。「弾は人を選ばない。戦をやらないで」
▼住民が巻き添えになった沖縄戦の教訓を語り継いでくれた体験者たち。その教訓は私たちの道しるべだ。誰よりも彼らは今、「台湾有事」を盾に自衛隊の増強が進むことに戦争への懸念を抱く。その懸念を現実のものにしてはいけない。