<金口木舌>18人の鋭いまなざし


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 思わずたじろいでしまうほど鋭いまなざしだった。並んでいるのは高齢女性18人の肖像写真。悲しみや怒り、憂いをたたえた表情は、見る者を正面から見据え、迫ってくる

▼糸満市の県平和祈念資料館で写真展「インドネシアの日本軍『慰安婦』」が開かれている。大パネルの傍らには少女時代の壮絶な体験が記されている。胸がえぐられる内容だ。抽象的な「慰安婦」としてではなく、軍隊によって壊された個々の人生が伝わってくる
▼撮影したのはオランダの写真家ヤン・バニングさん。インドネシアで日本軍の「慰安婦」にされた被害者の聞き取りを続けているジャーナリスト、ヒルデ・ヤンセンさんと共に、一人一人の心を開き、丁寧に体験を聞いた上で撮らせてもらった写真群だ
▼長年「慰安婦」問題を取材している作家の川田文子さんによると、インドネシアでは多様な性暴力があった。大隊に慰安所、中隊には「慰安婦」巡回があるが、それがない小隊では現地女性を誘拐監禁し継続的組織的レイプが行われたという
▼昨年の朝日新聞誤報問題の後、「慰安婦」が語られにくくなっている。存在全てが虚偽だったとの中傷も一部メディアやネット上に見られる
▼戦中、沖縄にも147カ所の慰安所があり、女性の人権が踏みにじられた。18人の鋭い眼光と向き合い、加害の歴史を学ぶ意味は大きい。23日まで。