<金口木舌>パリだけではない


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 菜那

 パリで起きた残忍卑劣な同時多発テロ。その犠牲者を悼む声が世界中に広がっている。各地の名所はフランス国旗の青白赤にライトアップされた。フェイスブックではプロフィル写真に三色旗を重ねる人が相次いでいる

▼これに異を唱える動きもネット上にある。「中東では日常的にテロがあるのに」「パリだけを哀悼するのは欧米中心思考だ」。米歌手ベット・ミドラーさんは「ベイルートの犠牲者も忘れないで」と書き込んだ
▼パリ事件の前日、レバノン首都で起きた2件の自爆テロのことだ。43人が死亡、200人以上が負傷し「イスラム国」が犯行声明を出した。自戒するが、この記事は本紙も含め大半の新聞は小さな扱いだった。報じない新聞もあった
▼ベイルートの医師はブログにこう書いた。「私の国の人が死んだ時、国旗色にライトアップした国はなかった」。シリア出身のアナウンサーは「アラブ諸国では毎日起きていること。全世界があなた(パリ)の味方になってくれるのをただうらやましい」
▼10月はトルコの集会で102人、ロシア機墜落で224人がテロによって命を奪われた。一方、シリアやイラクでは、仏米ロの連日の報復空爆で罪もない多くの一般市民が殺害されている
▼憎悪の連鎖は悲劇を積み重ねるだけだ。命に軽重はない。テロが日常化しているアラブ圏にも目を向け、関心を持ち続けたい。