<金口木舌>命の記憶を残す


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 山に親しむ機会である「山の日」だが、沖縄の山や丘には忘れられない記憶もある。沖縄戦だ。人々は山中や壕に身を潜め、米軍の空襲や艦砲射撃をしのいだ。壕で救われた命も多かったが「集団自決」(強制集団死)の悲劇も起きた

▼うるま市が「具志川グスク」と「具志川グスクの壕」を文化財に指定した。金武湾に面し、琉球石灰岩の丘陵にできた具志川グスクの歴史は貝塚時代にまでさかのぼる
▼1713年の「琉球国由来記」にも記録され、今も地域の人たちが「ウマチー」で五穀豊穣を祈る。その「命の祈り」の場で「集団自決」は起きた
▼1945年4月4日。軍歌を歌いながら警防団長の合図で手りゅう弾を爆発させ、壕にいた23人中13人が死亡した。生き残った人も遺族に引け目を感じ、当時のことを長く語らなかった
▼壕には95年、「集団自決」に関する説明板が設置された。戦後50年の節目のことだ。今回、新たに文化財として指定され、この一帯の歴史が継承される体制がより整うはずだ。営みと命の記憶をつないでほしい。