「暴風なんぞにはつよい木なのだが/気立てのやさしさはまた格別で/木のぼりあそびにくるこどもらの/するがままに/身をまかせたりしていて/孫の守りでもしているような/隠居みたいな風情の木だ」
▼山之口貘さんの詩「がじまるの木」はこう描く。この夏、猛威を振るった台風6号や老化による長寿ガジュマルの倒木、伐採の話が続いた
▼井上ひさしさん原案の戯曲「木の上の軍隊」の舞台となった伊江島のニーバンガズィマール、大宜味村喜如嘉のガジュマルは暴風に倒れ、糸満市のゴスペル幼稚園では老化でやむなく撤去された
▼木々は戦前戦後の歴史を見つめ、子らの成長を見守った。関わってきた人の心痛は深い。植え直しや挿し木からの再生を待とう。また何十年か後に、子どもの木登り遊びを見守ってもらえるように
▼沖縄では都市の生活圏でも見かけるガジュマル。その優しさに人間の寄る辺のなさを包んでもらい、樹上に住むいたずらっ子のキジムナーにも思いを致す。そんな「がじまるの木」が身近にある豊かさに感謝する。