<金口木舌>トップのすごみ


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 小柄ながら構えた姿は誰よりも大きく見えた。初めて空手形で喜友名諒選手の演武を目にした時、圧倒的な気迫を感じた。そのまま記事にも書いた

▼2005年6月の空手道県中学校選手権大会。沖縄東中の喜友名選手は団体形、個人形、個人組手の3冠に輝いた。「先生から言われた通りにしているだけ」という謙虚さと「技にもっと力強さを」というさらに上を見据えた言葉に、将来性を感じた
▼口数は少なかったが礼儀正しかった。強い選手はあいさつもしっかりできる。逆もしかり。もちろん例外もあるだろうが、児童生徒のスポーツを取材する中で、漠然と感じていたことを確信させる選手の一人だった
▼今や沖縄どころか世界を代表する選手だ。28、29の両日に行われた世界大会「空手1プレミアリーグ大会」で個人形、団体形で4年連続2冠に輝いた。「目だけで相手を威嚇し、動きを止める」という「目力」を意識した圧巻の演武だ
▼中学生のころから感じた気迫が、すごみを増した。1度でも優勝すること自体、たたえられるべき快挙だが、長年にわたって国内外でトップであり続ける努力と気力は想像もつかない
▼2020年東京五輪で空手は形、組手とも追加競技の最終候補になった。大舞台の静かな会場に緊張感のある呼吸音が響く瞬間が待ち遠しい。30歳になる喜友名の円熟味を増した演武を見たい。