<金口木舌>駕籠の底が抜ける前に


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 大阪堂島でも強気筋で鳴らした相場師。1人乗りの駕籠(かご)に無理やり2人で乗り込む。案の定、底が抜けたが「わしらカンカンの強気で通ってる2人やぞ。いっぺん乗った相場、途中で降りたことなんかない。そんな験の悪いことできるかい」と啖呵(たんか)を切る

▼落語「住吉駕籠」は米の相場取引が盛んな時代、子どもっぽくも意地を通す仲買人を描く。一度張ったら降りないのは相場師のさがだろうが、掛け金が国民がこつこつためた金だとしたら
▼年金の積立金が7-9月期で7兆8千億円もの損失を出した。四半期では2001年以降、過去最大の赤字だ。中国の景気減速への懸念で株価が下がったことが影響したとされる
▼しかし運用損の理由は昨年10月から株式保有の比率を上げたことにある。株式市場の活性化を図るという安倍政権の意向を受けたものだが、リスクのある株取引で年金積立金が失われるとの国民の不安が的中した
▼秋以降の株価上昇もあって、政府は強気だ。菅義偉官房長官は「短期的には振れ幅が大きいが、長期的にリスクは逆に少なくなっている」と評価する。今後も国民の大事な資産を危険にさらすつもりのようだ
▼相場は降り時が肝要だとか。誤れば、堂島の相場師のように底の抜けた駕籠から足だけ出して歩かねばならなくなる。足が出たとのオチ、お後はよろしくない。