<金口木舌>ロバーツ監督「根性」に期待


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 「ポリティカル・コレクトネス(中立で差別を含まない)の議論とは、他者を定義する側の権威にすぎない」

▼言葉の主はトニ・モリスン氏。この人は次のように意義付けられる。アフリカ系米国人初のノーベル文学賞作家、84歳の女性。逃亡奴隷女性の内面を描いた「ビラヴド」でピュリツァー賞を受賞した
▼米大リーグのドジャース新監督に就任したデーブ・ロバーツ氏は同球団初の非白人監督と呼ばれる。父はアフリカ系米国人、県出身の栄子さんを母に持つ沖縄生まれの日系米国人で43歳の男性。就任会見で「沖縄、日本は自分の一部」と話した
▼「幅広い視野で身を粉にして働け」と息子に伝えた元海兵隊員の父は米紙にこう語る。「偏狭な軍隊社会で人種は問題にならない。何を達成した
か、そしてあなたの父が何者か-どの階級にいるかが大切だ」。耳の痛いジョークを披露するも人種に深く立ち入らなかった
▼「深い話をする機会はあまりないが、父が(人種の)話を持ち出すときに方向は必ず決まっている。その力に私は同意せざるを得ない」(ロバーツ氏)。親子が明かさぬ“方向”をしばし考える
▼少数者監督就任に沸く米国だが、うるさい外野もあると聞く。文学やスポーツを通して人種差別の重い扉をこじ開けてきた国だ。多様な背景を持って挑む野球の頂点で「根性を好む」という彼ならではの手腕に期待し、応援したい。