<金口木舌>「食べる」の周りには


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 夜更けにコンビニの周りをうろつく少年少女、外食チェーン店で深夜勤務するあどけないアルバイトの顔。仕事帰りに毎夜擦れ違う彼らが夕飯に何を食べたかとふと考える

▼24時間買える手軽な総菜やインスタント食品の向こうに、子どもや若者の個食/孤食の風景が見える。家庭の事情で家族の食卓を持たない子どもでも、小銭を持っていれば大量消費社会が食を支えてくれる
▼そんな中、子どもの食を支援する取り組みが広がる。沖縄市中の町小学校区のキッズももやま食堂や生活困窮者支援団体の子ども食堂、子どもや障がい者、高齢者が集う那覇市長田のほのぼのヒロバなどの開所が相次ぐ
▼浦添市は来年度から一括交付金を活用し、児童センターが取り組む子ども食堂での大型冷蔵庫や業務用炊飯器などの購入費を予算化する。民間や行政の地道な支援の動きに、知恵を出し合い、人と地域を結び直す機運を垣間見る
▼家庭や地域が崩れたと嘆いてばかりもいられない。日々成長する子どもの支援は待ったなしだ。大人はあらゆる手を尽くし、温かい食事を誰かと食べる食卓の機会を子どもに贈らなくてはならない
▼食材を切って煮炊きし、米をとぐ。家族ではない大人と話す。ただ食べ物を口に入れるだけではない。「食べる」の周辺にある有形無形のさりげない出来事こそが、子どもの育ちの糧となるはずだ。