<金口木舌>ムーチーの日さまざま


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 スーパー店頭にサンニン(月桃)の葉が並び始めた。子どもたちの健康を願う行事、ムーチーの季節だ。一般的に旧暦12月8日(ことしは17日)とされ、琉球の史書「球陽」には、1735年にこの日に統一したとある

▼しかし、西原町東側の17集落では旧12月7日だ。こんな話が伝わる。金丸(後の尚円王)に仕えていた「御茶多理真五郎」(ウチャタイマグラー)が死後、夜な夜な墓から抜け出して食べ物を腐らせていた。それで1日早めたという
▼各市町村史によると、北中城や中城の沿岸部、嘉手納も旧12月7日のようだ。うる
ま市の津堅島は旧12月6日、勝連半島では旧12月1日と記されている
▼県内で一番早いのは旧11月1日に行う恩納村の谷茶、冨着、前兼久、仲泊の4集落だ。いわれも面白い。この地域に人望の厚い餅好きの役人がいた。旧12月のムーチー前に大陸派遣が決まり、憂えていたところ、住民が1カ月早めたのが始まりとされる
▼年の瀬に仲泊を訪ねると、サンニンの葉を十字に結んだ魔よけが門扉や軒先に下げられていた。今でも独自の伝統が息づく光景に心が和んだ
▼同じ風習でも画一的でないのが興味深い。沖縄文化の多様性を物語る。外来のハロウィーンや恵方巻きもいいが、大切に残していきたい島の行事だ。暖冬の中、ここ数日「ムーチービーサ」が続く。ムーチーでクンチ(根気)をつけたい。