<金口木舌>小さな島の大舞台


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 十数年前だが、思い出深い取材がある。宮古島のそばに浮かぶ大神島にある平良市立大神小中学校(当時)の運動会だ。在校生は4人だったが、年1度の最大行事に島民の数倍の関係者が駆け付けた。取材というより応援団として笑顔を共有した

▼地方部記者は住民らと身近に触れ合える。取材を通し地域の一体感を肌で感じる。過日、その醍醐味(だいごみ)を味わう機会があった。本部町水納島の水納小中学校の学習発表会のことだ
▼小学2年、5年、中学3年生の計3人の晴れ舞台。主役たちは観客の視線を一身に浴びながら終始てきぱきと動く。休んでいる暇はない。1人の役割は多く、音楽演奏や総合学習の報告など、司会と発表を交互にこなした
▼観客も見学だけではない。アセロラゼリーや菓子など家庭の味を差し入れとして持参。会場の後方に一品一品が並べられた。終了後の懇親会などで味わうという。地域で待ち望む行事であることが一目瞭然だ
▼加えて教職員も創作劇を熱演し、大きな拍手を浴びた。3人だけの発表会だが、生徒らの目は輝き、会場も子どもたちへの愛情で満ち満ちていた
▼子どものやりがいや夢、自信を育むことは規模に関係なく、どの学びやでも可能だろう。児童生徒の視点に立つ教育環境づくりは学校や地域の重要な役割だ。工夫が詰まった小さな島の発表会がその大切さを教えてくれた。