<金口木舌>風を読み解く


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 「風が吹けば桶屋(おけや)が儲(もう)かる」のことわざが頭に浮かぶ。南西石油のガソリン値上げのことだ。日常生活に直結するだけに事態は深刻である

▼風はブラジルで起きた。親会社であるブラジル国営石油会社の日本撤退である。汚職疑惑が発端となり経営難を招いた。そのあおりで子会社の南西石油は昨年、石油精製事業をやめた。こちらも経営悪化が進み、値上げと相成った
▼ブラジルの政財界を吹き抜けた疾風が地球を半周回って沖縄を襲った。原油安なのに沖縄だけが値上げでは合点はいかぬ。子会社が苦境にあるのに親会社が知らんぷりでは理不尽だ。南西石油従業員の雇用問題も気になる
▼時には予測できない風も吹く。1月末の全国世論調査で安倍内閣の支持率が上昇した。金銭授受問題で閣僚が辞任したのに、である。政権を揺るがす騒ぎの中でいかなる風が吹いたのか気になるところ
▼風にあおられることもある。同じ世論調査で普天間飛行場を辺野古に移設する政府方針を支持する人が支持しない人を上回った。宜野湾市長選を都合良く解釈し、ここぞとばかり風力と風向きを操る動きも出てこよう
▼ことわざの世界では、風が吹いて桶屋が儲かるまでにネコやネズミが登場する。現実社会でも、一陣の風が予想外の結果を生むまでには、さまざまな出来事が絡む。それを見逃さぬ眼力で風を読み解きたい。