<金口木舌>法への目配り


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 憲法に基づいて政治に歯止めをかける。立憲主義は多数の意見を制限してでも、少数の意見を保障する側面がある。時の政権にはバランスある政治への目配りが求められる

▼沖縄弁護士会は5年前から「法教育授業」で学校を巡回している。児童に法律や司法を理解してもらうことで、主権者意識を育むことが目的だ。授業は具体的な事案を題材に児童自らがルールを作り、どう解決するのかを話し合う
▼12日に沖縄市の美東小学校であった授業は、住宅街にカラオケ店ができた場合の影響について考えた。騒音が発生しないか。非行の温床にならないか。思い付くマイナス面を児童が作ったルールに当てはめ、解決策を探った
▼議論が進むと、カラオケ店にも周辺住民にも守るべき利益があることに気付く。いかに折り合いをつけるか。容易なことではない。「ルールに当てはめて解決するのがこんなに難しいとは思わなかった」。児童の感想である
▼昨年9月、多くの学者が憲法違反と指摘するのを顧みず、安全保障関連法が成立した。禁じられてきた集団的自衛権を、範となるべき政権が合憲と強弁する。政治がこれでは小学生に恥ずかしい
▼多様な利益に目を配り、ルール内での解決に苦心しながら解決策を探る小学生とは、あまりに対照的である。「法教育授業」が今、最も必要なのは政治家かもしれない。