<金口木舌>介護を愛し、共に生きる


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 川崎市の老人ホームで起きた認知症の入所者3人の転落死事件。最初に死亡した男性の殺害容疑で元職員(23)が逮捕された

▼入所者に繰り返した窃盗事件でも逮捕されていた。計画的殺害も示唆され、介護のストレスといった理由も取り沙汰されるが、解明はこれからだ。この施設、別の職員の入所者虐待も発覚した
▼「介護を愛し、共に生きる」との主題を追究する木村浩子さん(78)は、脳性小児まひによる言語障がいと両手右脚硬直の重度障がいがある。伊江島で平和と福祉を考える「土の宿」を始めて34年、信条は「平和でなければ福祉は成り立たない」
▼「共倒れになる前に、共に生きていくことを考えよう」。介護を必要とする側と支援する側の人権をどちらも大切にしようと言い続ける。派遣ヘルパー事務所増加の一方で内容の伴わない介護も増えたと指摘、低賃金で人の命に関わる介護者の待遇改善も訴える
▼山口県生まれ。戦時中に日本兵から「足手まといだから(娘を)殺せ」と青酸カリを手渡された母と共に逃げ、生きた。「障がい者は施設でおとなしく生活すべきだ」という世間もよく知る
▼介護を愛し、共に生きるとは何だろう。木村さんはいつも涼しい笑顔、たまに痛快な“毒舌”で老若男女をいや応なく引き付け、笑いと一緒にそのヒントを与えてくれる。何度でも繰り返し考えたい。