<金口木舌>住民主体で自立、交流の場を


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 名護市の大浦湾。2014年7月、キャンプ・シュワブ内の施設が解体され、新基地建設予定地での工事が始まって以降、この海が取材現場の一つだ。船上や陸からの監視など、同じ海とこれほど集中的に接したことはない

▼真っ青な海に似合わない喧噪(けんそう)の場の近くに、地域交流施設「わんさか大浦パーク」がある。3月で開所から丸5年。農産物直売だけでなく民泊やエコガイド養成の窓口もあり、構想通り、交流が育まれる
▼当初この施設の運営資金は基地再編交付金を充てる予定だった。名護市の基地受け入れ拒否で交付金が入らなかったが、その窮地を二見以北10区が「自立」を旗印に連携して救った。住民の手で人が集う拠点にした
▼二見集落で100年以上も守り育てる特産品「赤からし菜」の生産者らが先日、組合を結成した。「わんさか」で初の即売会を行い、ブランド化へ動きだした
▼組合は1年以上練り上げて形となった。協議に市も協力したが、住民の発案、行動があっての船出だ。組合の事務局長で施設運営を指揮する宜寿次聰さんからは「補助金ありきではない、地域主体の成長が目標」と、いつもの口癖がこの日も聞かれた
▼経済振興策と引き換えに基地負担を強いる言動は多い。一方で新基地問題で揺れる海を目の前にする場所での「脱依存」の取り組み。住民の地道な活動は頼もしい。