<金口木舌>あなたが思う福島は


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 12日付の全国紙に「あなたが思う福島はどんな福島ですか?」と題した全面広告が載った。避難生活、除染作業、健康不安。原発事故に絡む言葉が浮かぶ。広告主は福島県

▼「あなたと話したい。五年と、一日目の今日の朝」と広告は呼び掛ける。「福島の未来は、日本の未来」ともある。福島の未来のため日本はどうあるべきか、という問い掛けと受け止めた
▼広島で被爆した詩人、栗原貞子さんの作品に「ヒロシマというとき」がある。「〈ヒロシマ〉というとき/〈ああ ヒロシマ〉と/やさしくこたえてくれるだろうか」と問い掛ける詩人は、アジアの怒りと向き合う
▼戦時中、日本が犠牲を強いたアジアから「やさしいこたえ」が返ってくるよう、武器を捨て異国の基地を撤去せねばならないと栗原さんは説いた。「汚れた手」を清める責任を戦後日本に突き付けた
▼福島はどうか。児童文学者の斎藤惇夫さんは原発事故で負の遺産を子どもたちに与えたと述べる。「過ちは繰り返しません」を戦後の出発点とした日本が2度目の過ちを犯したとも(岩波ブックレット「3・11を心に刻んで2016」)
▼「あなたが思う福島は」という問い掛けに私たちは答えよう。過ちを繰り返さない。事故を風化させてはならない。風評に振り回されるまい。そのことが福島の未来をつくる。日本の今に課せられた責務である。