<金口木舌>おきゅうの1票


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 幼いころ、祖父の脅し文句で一番怖かったのが「やーちゅー(おきゅう)」。一度もされたことはないが、何か恐ろしい刑罰のようで震え上がった。肩凝りを愚痴る年になり、やーちゅーも試したくなるが

▼永田町では「参院選はおきゅうの1票」と言われる。有権者が時の政権に厳しい審判を下すことがあるからだ。1989年の宇野内閣はリクルート事件や自身のスキャンダルで、98年の橋本内閣は消費税5%引き上げで惨敗した
▼2007年の第1次安倍内閣も「消えた年金問題」や閣僚不祥事で大敗した。念頭にあったのだろう。13日の自民党大会で山口那津男公明党代表は語気を強めた。「政権のおごりや緩みにおきゅうを据えてやれ、という国民の気持ちを生じさせてはならない」
▼だが、政権の緩みは一向に収まる気配がない。石破茂地方創生相は地域再生法改正案の説明で間違った文書を読み上げた。林幹雄経産相は原子力政策の答弁で立ち往生した
▼甘利明前経済再生相の金銭授受や閣僚の失言後も続く緩みはいかんともし難い。「おきゅうを据えたくとも野党に代えようとは思わないだろう」と見る向きもある。そうだろうか
▼憲法改正、マイナス金利、経済政策、消費増税、TPP加盟など争点は多い。沖縄では辺野古新基地の是非が問われる。この国の在り方をただすおきゅうを据えるのはあくまで私たちだ。